【ことわざ】
犬の尾を食うて回る
【読み方】
いぬのおをくうてまわる
【意味】
犬が自分のしっぽをくわえようとしても回るばかりで届かないように、いくら焦っても思うようにできず、苦労のわりに報いが少ないことのたとえ。


【英語】
・be chasing your tail(忙しく動き回っているのに、ほとんど成果が出ない)
【類義語】
・骨折り損のくたびれ儲け(ほねおりぞんのくたびれもうけ)
・労多くして功少なし(ろうおおくしてこうすくなし)
【対義語】
・一石二鳥(いっせきにちょう)
「犬の尾を食うて回る」の語源・由来
「犬の尾を食うて回る」は、犬が自分のしっぽをくわえようとして、同じ場所をぐるぐる回る様子から生まれたことわざです。ここでの「食うて」は、実際に食べきるというよりも、しっぽを口でくわえようとする動きを表し、追いかけても追いかけても届かない姿をたとえにしています。
犬が自分の尾を追って回る行動は、遊びのように見える場合もあれば、かゆみや体の不調が関わっている場合もあります。いずれにしても、外から見ると、同じところを回り続けて前へ進まない動きとして受け取られやすく、その姿が、「焦って動いているのに成果へ近づかない」という意味につながりました。
古い用例として、『草根集(そうこんしゅう)』(文明5年〈1473年〉の序をもつ室町時代の歌集、正徹の歌を正広が編集)巻八に、「犬のををくいのやちたび廻る共めぐりあはずはみやつかれまし」とあります。これは、犬がしっぽをくわえようとして何度も回っても、しっぽに届かなければ、身が疲れるだけだという趣旨の歌です。
この古い形では、「犬の尾を食う」という具体的なしぐさが先にあり、そこに「回る」「めぐる」という動きが重なっています。しっぽは自分の体の一部なので、いくら追っても、追う動きそのものによって、また遠ざかることになります。そのため、ただ努力しているだけではなく、努力の方向がずれていて成果に結びつかない、という意味が強く表れています。
後には、「回る」のほかに「巡る」の形も用いられ、意味は「いくら焦っても思うようにできない」「労が多くて報いが少ない」という形で定着しました。似た考えを表す「骨折り損のくたびれ儲け」と同じく、ただ一生懸命に動けばよいのではなく、目的に合った方法を選ぶことの大切さを教える表現として使われます。
現在の「犬の尾を食うて回る」は、犬の姿をそのまま言うだけでなく、同じ失敗をくり返し、仕事や相談が進まないときにも用いられます。焦りのまま動くと、時間も体力も使うのに、かえって目的から遠ざかることがある、という戒めを含むことわざです。
「犬の尾を食うて回る」の使い方




「犬の尾を食うて回る」の例文
- 計画を立てずに資料を探し回るだけでは、犬の尾を食うて回るようなものだ。
- 担当部署を確かめずに電話をかけ直してばかりで、犬の尾を食うて回る結果になった。
- 同じ計算ミスを直さずに答えだけ書き直すのは、犬の尾を食うて回るやり方だ。
- 会議で原因を決めずに意見だけを重ねても、犬の尾を食うて回るばかりで結論が出ない。
- 説明書を読まずに部品を組み替え続け、犬の尾を食うて回るように時間だけが過ぎた。
- 練習方法を変えずに失敗をくり返すなら、犬の尾を食うて回ることになりかねない。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・馬場俊臣「『犬』に関することわざ(2)―『犬』をどう捉えてきたか―」『札幌国語研究』第25号、北海道教育大学札幌校国語国文学会、2020年。
・正徹『草根集』1473年ごろ。
・Cambridge University Press『Cambridge Dictionary』Cambridge University Press。























