【ことわざ】
石に裃
【読み方】
いしにかみしも
【意味】
謹厳で堅苦しい人、または、きまじめで頑固な人のたとえ。形式ばっていて、柔らかさや融通が感じられない様子を表す。


【英語】
・strait-laced(考え方や振る舞いが厳格で堅苦しい)
・stiff and formal(態度や様子が堅苦しく、くつろいでいない)
【類義語】
・石部金吉金兜(いしべきんきちかなかぶと)
・堅物(かたぶつ)
・木仏金仏石仏(きぶつかなぶついしぼとけ)
【対義語】
・融通無碍(ゆうずうむげ)
・臨機応変(りんきおうへん)
「石に裃」の語源・由来
「石に裃」は、硬いものの代表である石に、改まった礼服である裃(かみしも)を重ねて考えるところから成り立つことわざです。石そのものの硬さに、礼装のきちんとした印象が加わり、たいへん堅苦しい人の姿を思わせます。
石は、もともと硬く、動かず、表情を変えないものとしてとらえられます。このことわざでは、石の性質が、人の心や態度の硬さ、また融通のきかなさを表す材料になっています。
裃は、江戸時代の武士の中礼服として用いられ、庶民の礼服にもなった服装です。上下とも同じ布や同じ紋でそろえる形から、改まった場にふさわしい、形式を重んじる衣服として理解されてきました。
裃は、十七世紀以降、肩衣(かたぎぬ)に袴(はかま)を着けた服装をいうようになり、武士の出仕着や日常着にも使われました。礼を尽くす服装である一方、形がはっきりしていて、きちんとしすぎた印象も持ちやすい服です。
このことわざは、石に人の礼服を着せるという、少しこっけいな見立てで成り立っています。動かない石が裃を着ている姿を思いうかべると、まじめではあるものの、柔らかさがなく、近づきにくい感じがよく伝わります。
そのため「石に裃」は、単に「まじめな人」をほめる言葉ではありません。まじめさが長所であるだけでなく、それが強く出すぎて、頑固、形式的、いかめしいと見られる場合に使います。
近い意味の言葉に「石部金吉金兜」があります。これは、石や金のように硬い名を持つ人物に、さらに金の兜をかぶせたようだという発想から、極端に融通のきかない人を表します。
また、「堅物」もよく似た意味で使われます。きまじめで融通の利かない人を表す言葉で、「石に裃」と同じく、柔軟さに欠ける人物を言い表すときに合います。
「木仏金仏石仏」も、情に動かされない人や、融通のきかない人のたとえとして用いられます。木・金属・石で作られた仏像のように、人間らしい反応が乏しいところを見立てた言葉です。
一方で、「融通無碍」や「臨機応変」は、状況にとらわれず、自由に考えたり、その場に応じて適切に動いたりすることを表します。「石に裃」が示す硬さとは反対に、柔らかく対応できる姿勢を表す言葉です。
現在の使い方では、校則や礼儀を大切にする人そのものをすぐに悪く言うのではなく、必要以上に形式を重んじて周囲を息苦しくさせる場合に使うと、意味がよく伝わります。きちんとしていることと、堅苦しすぎることの違いを感じ取ることが、このことわざを正しく使う手がかりになります。
「石に裃」の使い方




「石に裃」の例文
- 校長先生へのあいさつを考えすぎて、健太の話し方は石に裃のようになった。
- 彼は約束の時間や手順を大切にするが、時には石に裃と思われるほど堅苦しい。
- 町内会の集まりで議事進行を細かく区切りすぎ、司会者は石に裃だと言われた。
- 祝いの席でも冗談を一つも受け流さない態度は、石に裃という印象を与えた。
- 新しい企画に対して規則ばかり持ち出す上司は、石に裃のようで相談しにくい。
- 礼儀を守ることは大切だが、相手を緊張させるほどなら石に裃になってしまう。
主な参考文献
・公益財団法人日本漢字能力検定協会編『漢検 漢字辞典 第二版』日本漢字能力検定協会、2014年。
・ブリタニカ・ジャパン『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』。
・小学館『日本大百科全書(ニッポニカ)』小学館。
・松村明監修『デジタル大辞泉』小学館。
・Cambridge University Press & Assessment『Cambridge Dictionary』。























