【ことわざ】
勝つも負けるも時の運
【読み方】
かつもまけるもときのうん
【意味】
勝ち負けは、その時の運にも左右され、実力のある者が必ず勝つとは限らないということ。


【英語】
・You win some, you lose some.(勝つこともあれば負けることもある)
【類義語】
・勝負は時の運(しょうぶはときのうん)
・勝敗は兵家の常(しょうはいはへいかのつね)
「勝つも負けるも時の運」の語源・由来
「勝つも負けるも時の運」は、「勝負は時の運」と同じ考えを、勝つ場合と負ける場合の両方に広げて言い表したことわざです。「勝負は時の運」は、勝ち負けはその時の運によるもので、強い者が必ず勝つとは限らないという意味を表します。
もとの考えは、戦いや勝負の結果が、人の力だけでは決まらないことを表す言い方にあります。人がどれほど力を尽くしても、その時の流れ、相手の動き、偶然の重なりによって、結果が変わることがあります。
古い用例として、『太平記(たいへいき)』(14世紀後半成立、南北朝時代の軍記物語)巻十五に、「軍の勝負は時の運に依事なれば」という形が出てきます。これは、戦の勝敗はその時の運によるものなので、負けたことだけで必ずしも恥とはいえない、という文脈で用いられています。
この場面では、細川定禅が四国の軍勢に向かって、負け戦をどう受け止めるかを語っています。負けは運による面もあるとしながら、それでも名誉を取り戻すために、さらに一戦しようと兵を励ましています。
つまり、ここでの「時の運」は、ただ結果を運まかせにする言葉ではありません。勝敗には人の努力を越えた巡り合わせがあると認めつつ、その後どう振る舞うかも大切だという、戦場の考え方の中で使われています。
『太平記』巻十六にも、「合戦の習、勝負は時の運に依といへども」という近い形が出てきます。そこでは、勝負に運が関わるとしても、小勢で大軍と戦えば不利である、という現実的な判断も合わせて述べられています。
このように、「時の運」は、勝敗をすべて偶然だけで説明する言葉ではありません。実力や作戦が大切である一方、それだけでは決まらない部分があるという、勝負に向き合う人々の実感を表しています。
のちに「勝負は時の運」という形は、戦場だけでなく、試合、競争、賭け事、仕事上の勝負などにも広がりました。勝ち負けにこだわりすぎることを戒める言葉としても用いられます。
「勝つも負けるも時の運」という形では、「勝つ」ことと「負ける」ことの両方を並べるため、結果のどちらにも運が関わるという点がいっそう分かりやすくなります。勝った側には奢りを戒め、負けた側には必要以上に落ちこまないよう促す働きをもつ言い方です。
現在では、勝負に全力を尽くしたあと、結果を落ち着いて受け止めるときによく使います。努力を軽んじる言葉ではなく、努力してもなお思いどおりにならないことがある、という人生の一面を穏やかに示すことわざです。
「勝つも負けるも時の運」の使い方




「勝つも負けるも時の運」の例文
- 優勝候補のチームが初戦で敗れることもあるので、勝つも負けるも時の運だ。
- 実力は互角だったが、最後の一球で勝敗が分かれ、勝つも負けるも時の運と感じた。
- 努力を尽くした結果なら、勝つも負けるも時の運として受け止めるしかない。
- 商談では準備をしていても相手の都合に左右されるため、勝つも負けるも時の運の面がある。
- 兄は試合に負けた弟に、勝つも負けるも時の運だから次に生かせばよいと励ました。
- 勝ったからといって油断してはいけない、勝つも負けるも時の運なのだから。
主な参考文献
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・『太平記』14世紀後半。























