「いろはかるた」は、江戸時代の中期に京都で誕生し、大阪、名古屋、そして江戸へと広がっていきました。各地での内容には微妙な違いがあります。
この記事では、江戸いろはかるたの意味を一覧でご紹介します。
その他地域のいろはかるたは、「いろはかるたのことわざ一覧」をご覧ください。
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上方(京都)いろはかるたとは
「上方いろはかるた」や「京いろはかるた」は、江戸中期に上方地域で生まれた伝統的なかるたです。このかるたの起源は「京いろは」という名称で、多くの古いことわざが収録されており、中には「下駄と焼きみそ」や「足もとから鳥が立つ」といった、あまり知られていないことわざも含まれています。
また、仏教文化の影響を強く受けており、「仏の顔も三度」「寺から里へ」「これに懲りよ道才坊」といった仏教に関連することわざが多数含まれています。さらに、ブラックユーモアの要素もあり、「地獄の沙汰も金次第」といったことわざが収録されています。
「京いろは」は類似したことわざや不統一な仮名遣いが特徴でしたが、これが江戸に伝わると「江戸いろは」として内容や仮名遣いが整理・統一され、このバージョンが非常に人気を博しました。これは「犬棒かるた」とも呼ばれています。
一方、「上方いろは」という名称は後に登場し、これは京都と大阪の両方を含むものとされます。しかし、大阪でも独自の「上方いろは」が生産され、その結果「京いろは」は江戸と大阪の両方から圧倒されました。「尾張いろは」も登場し、時代やメーカーによる多様なバージョンが存在することから、いろはかるたの世界は複雑なものとなっています。
現在、大石天狗堂で「京いろは」の復活が試みられており、新たなバージョンが製作されています。これは古いものの複製ではなく、新しいことわざも含まれており、仮名遣いに関しては歴史的な仮名遣いとかるた専用の仮名遣いの両方が採用されています。「京いろは」には特有の別称は存在しないが、「猫判かるた」という呼称が一部で使われています。また、上方には「いやいやかるた」というバージョンも存在します。
いろはかるたは、その歴史の中で多様なバージョンが派生しており、様々な要素が取り入れられ、新しい種類のかるたが生まれ続けています。
上方いろはかるたのことわざ一覧表
文字 | 上方(京都) |
い | 一寸先は闇 |
ろ | 論語読みの論語知らず |
は | 針の穴から天井をのぞく |
に | 二階から目薬 |
ほ | 仏の顔も三度 |
へ | 下手の長談義 |
と | 豆腐にかすがい |
ち | 地獄の沙汰も金次第 |
り | 綸言汗のごとし |
ぬ | 糠に釘 |
る | 類をもって集まる |
お | 鬼も十八 |
わ | 笑う門には福来たる |
か | 蛙のつらに水 |
よ | 夜目遠目笠の内 |
た | 立て板に水 |
れ | 連木で腹を切る |
そ | 袖振り合うも他生の縁 |
つ | 月夜に釜を抜かれる |
ね | 猫に小判 |
な | 済す時の閻魔顔 |
ら | 来年のことを言えば鬼が笑う |
む | むま(馬)の耳に風 |
う | 氏より育ち |
ゐ | 鰯の頭も信心から |
の | 鑿(のみ)と言えば小槌 |
お | 負うた子に教えられ浅瀬を渡る |
く | 臭いものに蠅がたかる |
や | 闇夜に鉄砲 |
ま | まかぬ種は生えぬ |
け | 下駄に焼き味噌 |
ふ | 武士は食わねど高楊枝 |
こ | これに懲りよ道斉坊 |
え | 縁の下の力持ち |
て | 寺から里へ |
あ | 足下から鳥が立つ |
さ | 竿の先に鈴 |
き | 義理と褌は欠かされぬ |
ゆ | 幽霊の浜風 |
め | 盲の垣覗き |
み | 身は身で通る裸ん坊 |
し | 吝ん坊の柿の種 |
ゑ | 縁の下の舞 |
ひ | 瓢箪から駒が出る |
も | 餅は餅屋 |
せ | 栴檀は双葉より芳し |
す | 雀百まで踊り忘れず |
京 | 京に田舎あり |
上方いろはかるたのことわざ意味一覧
一寸先は闇
例えすぐ先の事でも、未来の事は誰にも全く予測できないという意味です。
論語読みの論語知らず
書物の内容は理解できても、実行がともなわないこと。また、そうした人を皮肉ったたとえ。
針の穴から天井をのぞく
少しの知識しかないにも関わらず、大きな問題を解決しようとすることのたとえ。
二階から目薬
物事がまわりくどくて、あまり効果がないこと。また、物事がうまくいかず、もどかしいこと。
仏の顔も三度
どんなに心の広い人でも、何度もひどいことをされれば、ついには怒りだすということ。
下手の長談義
話の下手な人ほど、だらだらと長話をするという事。また、話の下手な人ほど、興味のない話を長々として相手をうんざりさせるという事。
豆腐にかすがい
意見をしても、少しのてごたえもなく、ききめもないことのたとえ。
地獄の沙汰も金次第
この世のことはすべて、お金さえあれば解決できるという意味。
綸言汗のごとし
一度口にした君主の言は取り消すことができない。
糠に釘
何の手応えも、効き目もないことのたとえ。
類をもって集まる
性質が似ていたり、趣味が似ていたりすると、自然に寄り集まるということ。
鬼も十八
どんなものにも、その魅力がいちばん発揮される時期があるということ。女性は誰でも年ごろになると、色気や魅力が出てくるというたとえ。
笑う門には福来たる
いつも明るくほがらかに暮らしている人の家には、自然に幸せがやってくるものだ。
蛙のつらに水
どんな酷い目にあっても、顔色を変えることなく、平気なこと。または無神経なこと。図太いことのたとえとして使われる。
夜目遠目笠の内
女性は夜の暗がりで見るとき、遠くから見るとき、笠かぶった顔をのぞいて見るときなどは、はっきりと見えないため実際より美しく見えるということ。
立て板に水
つっかえることなく、すらすらと流れるように話すこと。
連木で腹を切る
到底できない、不可能なことのたとえ。
袖振り合うも他生の縁
人とのちょっとしたかかわりも、決して偶然ではなく、深い縁があってのことだから、人には親切にしなさいという教え。
月夜に釜を抜かれる
ひどく油断することのたとえ。
猫に小判
どれほど貴重なもの・高価なもの・価値のあるものでも、持ち主がそれを知らなければ何の値打ちもないことを意味します。すばらしいものを見せても、効果や反応がない事を意味することもあります。
済す時の閻魔顔
他人から金品を借りるときはにこにこしているが、返済するときには渋い顔をする。
来年のことを言えば鬼が笑う
まだ先の話をあれやこれや言って、見通しのたつはずのない未来について予測するのは、意味がないということ。
むま(馬)の耳に風
人の意見に少しも感せず、聞き流していることのたとえ。馬耳東風。
氏より育ち
氏素性のよさより子供から大人になる間の環境やしつけ、教育の方が、人間の形成に大きな影響を与える。
鰯の頭も信心から
つまらないものでも信仰の対象となるとありがたく思われるようになるということ。
鑿(のみ)と言えば小槌
色々な事に対して、細かな所まで気が利く事を意味しています。
負うた子に教えられ浅瀬を渡る
時には、自分よりも年下の者や未熟な者から教えられることがあることのたとえ。
臭いものに蠅がたかる
悪い人のもとには悪い人が集まってくる。
闇夜に鉄砲
目標の見えない暗闇で鉄砲を撃つことから、当てずっぽうにやるたとえ。さらに、向こう見ずにやることのたとえ。
まかぬ種は生えぬ
何もしないで、良い結果を得ようとしても得られない。
下駄に焼き味噌
形は似ていても、内容はまったく違っていることのたとえ。
武士は食わねど高楊枝
武士は物を食べなくても、食べたようなふりをして楊枝を使って空腹を人に見せない。
これに懲りよ道斉坊
これに懲りよというのを口拍子よく言ったもの。
縁の下の力持ち
目立たないところで、人のために力をつくすこと。また、その人をさす。
寺から里へ
物事が逆であることのたとえ。
足下から鳥が立つ
①身近な所で意外なことが起こる。
②急に思いたってあわただしく物事を始める。
竿の先に鈴
うるさいこと。よくしゃべること。
義理と褌は欠かされぬ
普段身に着けている褌のように、義理は欠かすことのできない大事なものだということ。
幽霊の浜風
幽霊が浜辺の強い風にあおられたように、元気のないさま。
盲の垣覗き
やってもむだなことのたとえ。
身は身で通る裸ん坊
貧富や賢い愚かの差はあっても、人はそれぞれにふさわしい暮らしをしてゆくものであり、けっきょくは、自分を中心とする生活しかできぬものであることをいう。
吝ん坊の柿の種
けちな人は、どんなつまらないものや、くだらないものでも執着(しゅうちゃく)して惜しがって手離さないというたとえ。
縁の下の舞
他人のために苦労、努力をするものの認められないこと。無駄な骨折り。
瓢箪から駒が出る
思いがけないようなことがおこること。また、冗談のつもりだったことが、現実に起こること。
餅は餅屋
何事も、それぞれに専門家がいるので、まかせたほうがよい、素人はかなわないということ。
栴檀は双葉より芳し
香木の栴檀は双葉が出たころから芳香を放つということで、大成する人物は幼時から優秀な素質を示すたとえ。
雀百まで踊り忘れず
子供のときに覚えた習慣やくせは、年を取っても直らないということ。
京に田舎あり
にぎやかな都の中にも、開けない田舎めいたところがある。また、よい所も一部悪いところがある意。