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「いろはかるた」とは
この「いろは歌」は、涅槃経に基づいて仏教の精神を和文で表現したものとされ、古くから日本で口ずさまれてきました。この歌は仮名の学習ツールとしても用いられてきました。
この47文字に「京」という文字を加えた合計48文字を使用して作られたのが「いろはかるた」であり、それぞれの文字を頭に持つ教訓的な諺や例えが歌の形に取り入れられています。
かるたは、絵札48枚と、それに関連する字札48枚、合計96枚から成り立っています。語源として、かるたはポルトガル語の「carta」に由来します。
絵札には諺や例えの意味を示す絵が描かれ、その頭文字も記載されています。葛飾北斎によるデザインは特に知られています。
この「いろはかるた」は、江戸時代の中期に京都で誕生し、大阪、名古屋、そして江戸へと広がっていきました。各地での内容には微妙な違いがあり、名古屋地方には「尾張かるた」という独自のバージョンも存在します。
「いろはかるた」のことわざ一覧表(江戸・上方・尾張)
「いろは歌」は、弘法大師が作ったという伝説がある日本の詩で、いろは順は、「以呂波歌・伊呂波歌・いろは歌」といわれる四十七文字を読み込んだ七五調の歌が使われます。
以呂波歌・伊呂波歌・いろは歌
色は匂へど 散りぬるを 我が世誰ぞ 常ならむ
有為の奥山 今日越えて 浅き夢見じ 酔ひもせず
いろはにほへと ちりぬるを わかよたれそ つねならむ
うゐのおくやま けふこえて あさきゆめみし ゑひもせす
これにより、文字を覚えるための手習い歌としても知られています。内容は仏教の無常観を基にしたもので、特にお釈迦様の涅槃経や雪山偈の「諸行無常、是生滅法、生滅滅己、寂滅為楽」という四行詩の教えを反映していると言われています。
色は匂へど 散りぬるを(いろはにほへと ちるぬるを)
文字 | 江戸 | 上方(京都) | 尾張(名古屋)・大阪 |
い | 犬も歩けば棒にあたる | 一寸先は闇 | 一を聞いて十を知る |
ろ | 論より証拠 | 論語読みの論語知らず | 六十の三つ子 |
は | 花より団子 | 針の穴から天井をのぞく | 花より団子 |
に | 憎まれっ子世にはばかる | 二階から目薬 | 憎まれっ子神直し |
ほ | 骨折り損のくたびれ儲け | 仏の顔も三度 | 惚れたが因果 |
へ | 屁をひって尻つぼめ | 下手の長談義 | 下手の長談義 |
と | 年寄りの冷や水 | 豆腐にかすがい | 遠い一家より近い隣 |
ち | ちりも積もれば山となる | 地獄の沙汰も金次第 | 地獄の沙汰も金次第 |
り | 律儀者の子沢山 | 綸言汗のごとし | 綸言汗のごとし |
ぬ | 盗人の昼寝 | 糠に釘 | 盗人の昼寝 |
る | 瑠璃もはりも照らせば光る | 類をもって集まる | 類をもって集まる |
お | 老いては子に従え | 鬼も十八 | 鬼の女房に鬼神 |
我が世誰ぞ 常ならむ(わかよたれそ つねならむ)
文字 | 江戸 | 上方(京都) | 尾張(名古屋)・大阪 |
わ | 割れ鍋にとじ蓋 | 笑う門には福来たる | 若い時は二度ない |
か | 癩の瘡うらみ | 蛙のつらに水 | 陰裏の豆もはじけ時 |
よ | よしのずいから天井のぞく | 夜目遠目笠の内 | よこ槌で庭をはく |
た | 旅は道連れ世は情け | 立て板に水 | 大食上戸の餅食い |
れ | れう薬(良薬)は口に苦し | 連木で腹を切る | 連木で腹を切る |
そ | 総領の甚六 | 袖振り合うも他生の縁 | 袖振り合うも他生の縁 |
つ | 月夜に釜を抜かれる | 月夜に釜を抜かれる | 爪に火をともす |
ね | 念には念を入れよ | 猫に小判 | 寝耳に水 |
な | 泣きっ面に蜂 | 済す時の閻魔顔 | 習わぬ経は読めぬ |
ら | 楽あれば苦あり | 来年のことを言えば鬼が笑う | 楽して楽知らず |
む | 無理が通れば道理引っこむ | むま(馬)の耳に風 | 無芸大食 |
有為の奥山 今日越えて(うゐのおくやま けふこえて)
文字 | 江戸 | 上方(京都) | 尾張(名古屋)・大阪 |
う | 嘘から出たまこと | 氏より育ち | 牛を馬にする |
ゐ | 芋の煮えたもご存知ない | 鰯の頭も信心から | 炒豆に花が咲く |
の | のど元すぎれば熱さ忘れる | 鑿(のみ)と言えば小槌 | 野良の節句働き |
お | 鬼に金棒 | 負うた子に教えられ浅瀬を渡る | 陰陽師身の上知らず |
く | 臭いものに蓋 | 臭いものに蠅がたかる | 果報は寝て待て |
や | 安物買いの銭失い | 闇夜に鉄砲 | 闇に鉄砲 |
ま | 負けるは勝ち | まかぬ種は生えぬ | 待てば甘露の日和あり |
け | 芸は身を助ける | 下駄に焼き味噌 | 下戸の建てた蔵はない |
ふ | 文はやりたし書く手は持たぬ | 武士は食わねど高楊枝 | 武士は食わねど高楊枝 |
こ | 子は三界の首っ枷 | これに懲りよ道斉坊 | 志は松の葉 |
え | えてに帆をあげる | 縁の下の力持ち | 閻魔の色事 |
て | 亭主の好きな赤烏帽子 | 寺から里へ | 天道人を殺さず |
浅き夢見じ 酔ひもせず(あさきゆめみし ゑひもせす)
文字 | 江戸 | 上方(京都) | 尾張(名古屋)・大阪 |
あ | 頭かくして尻かくさず | 足下から鳥が立つ | 阿呆につける薬はない |
さ | 三遍回って煙草にしょ | 竿の先に鈴 | さわらぬ神にたたりなし |
き | 聞いて極楽見て地獄 | 義理と褌は欠かされぬ | 義理と褌 |
ゆ | 油断大敵 | 幽霊の浜風 | 油断大敵 |
め | 目の上の瘤 | 盲の垣覗き | 目の上の瘤 |
み | 身から出た錆 | 身は身で通る裸ん坊 | 身うちが古み |
し | 知らぬが仏 | 吝ん坊の柿の種 | 尻食らえ観音 |
ゑ | 縁は異なもの味なもの | 縁の下の舞 | 縁の下の力持ち |
ひ | 貧乏暇なし | 瓢箪から駒が出る | 貧相の重ね食い |
も | 門前の小僧習わぬ経を読む | 餅は餅屋 | 桃栗三年柿八年 |
せ | 背に腹は代えられぬ | 栴檀は双葉より芳し | 背戸の馬も相口 |
す | 粋は身を食う | 雀百まで踊り忘れず | 墨に染まれば黒くなる |
京 | 京の夢大阪の夢 | 京に田舎あり | (なし) |
『花はすぐ散るし、人もいつかは死んでしまう。この世で永遠に変わらず存在するものはない。だから、人生の難しさを乗り越えて、一時的な夢や欲望に囚われずに生きよう。たくさんの悩みがあるけれど、小さな幸せを見つけて、毎日を大切に生きることが大事。現実から逃げずに、今の瞬間を大切に生きることで、真の意味での幸福を見つけられる。』
「江戸いろはかるた」のことわざ意味一覧
「江戸いろはかるた」は、江戸時代後期に生まれた日本の伝統的な遊びの一つで、正月の子供たちの間で特に人気がありました。このかるたの起源は上方(京坂地域)で、その後、江戸地域で人気が高まり、「犬棒かるた」という名前でも知られるようになりました。名前の由来は、かるたの中の最初のことわざ「犬も歩けば棒にあたる」からきています。
江戸いろはかるたについての詳細は、「江戸いろはかるたのことわざ意味一覧」をご覧ください。
「上方いろはかるた」のことわざ意味一覧
「上方いろはかるた」は、江戸中期に上方地域で生まれた伝統的なかるたで、「京いろは」という名前が元々の起源です。多くの古いことわざが収録されており、中でも知られざるものや仏教に関連することわざ、ブラックユーモアを含むことわざなどがあります。
「京いろは」が江戸に伝わり、「江戸いろは」として整理・統一された後、大変な人気を得ました。この「江戸いろは」は「犬棒かるた」とも称されます。後に「上方いろは」という名称も現れ、京都と大阪の特色を併せ持ちながら、大阪独自のバージョンも生まれました。
現在、大石天狗堂では「京いろは」の復活が試みられ、新しい版も作られています。このかるたの世界は、時代や地域により様々なバージョンが存在し、その歴史や多様性は日本文化の一部として今も継承されています。
上方いろはかるたについての詳細は、「上方いろはかるたのことわざ意味一覧」をご覧ください。
いろは歌は英語版もある
※英語の声:音読さん
The five boxing wizards jump quickly.
- 意味:5人のボクシングの魔術師がすばやくジャンプする。
Mr.Jock, TV quiz Ph.D., bags few lynx.
- 意味:テレビのクイズ博士ジョック氏は山猫をほとんど袋に入れない。
A quick brown fox jumps over the lazy dog.
- 意味:機敏な茶色い狐が、のろまな犬を飛び越える。
Quick wafting zephyrs vex bold jim.
- 意味:さやさやとそよぐそよ風が、大胆なジムを苛立たせる。
Waltz nymph, for quick jigs vex Bud.
- 意味:ワルツになさい、乙女よ、速いジグだとバドが苛立つから。
いろはかるたの一部差し替えについて
現代の江戸いろはカルタでは、古くからの句やことわざの中に、現代の感覚に合わない、難解あるいは不適切とされるものが存在します。
- 「月夜に釜を抜く」は「月とすっぽん」に変更。
- 「総領の甚六」は「損して得取れ」に変更。
- 「芋の煮えたもご存じない」や「子は三界の首かせ」のような現代での解釈が難しい句も差し替えの対象となっています。
- 「屁をひって尻すぼめる」のような下品とされる句や、人権に関わる表現が含まれる句も差し替えが求められています。
一方で、原型を維持することにこだわる業者も存在し、これらの差し替えに対しては賛否両論があることが伺えます。
例えば、京都市の老舗「大石天狗堂」は、句の意味や教育的価値を考慮しつつ、専門家の意見も取り入れて差し替えを行っています。一方、東京の「奥野かるた店」は、古い江戸カルタをほぼそのままの形で復刻して販売しています。
このように、カルタの差し替えは時代の変化や価値観に合わせて行われているものの、どこまでが許されるのか、また、原型をどう尊重すべきかという議論が続いています。
項目 | 詳細内容 |
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差し替えの背景 | 現代の感覚や価値観に合わない、難解や死語となっている句が存在するため |
差し替え例1 | 「月夜に釜を抜く」 → 「月とすっぽん」(明るい夜にお釜を盗まれる、不注意極まりない) |
差し替え例2 | 「総領の甚六」 → 「損して得取れ」(甘やかされて育った長男にはお人よしが多い) |
差し替えの基準 |
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業者の取り組み | 大学教授などの専門家の意見を参考に差し替え |
従来の内容の保存 | 奥野かるた店のように、ほぼ原型を保持して復刻する業者も存在 |
変更の開始時期 | 1950-60年代から差し替えが始まり、現在では20枚以上差し替えられているものも |
他の文化への影響 | 絵本の世界でも「さるかに合戦」や「かちかち山」など、残酷な場面や難解な概念が差し替えられることが増えている |