【慣用句】
顔から火が出る
【読み方】
かおからひがでる
【意味】
恥ずかしくて顔が真っ赤になること。強い恥ずかしさで、顔が熱くなるように感じるさま。


【英語】
・blush with shame.(恥ずかしさで顔を赤らめる)
・burn with shame.(恥ずかしさで顔が熱くなるほど恥じる)
【類義語】
・穴があったら入りたい(あながあったらはいりたい)
・赤面する(せきめんする)
【対義語】
・平然(へいぜん)
・厚顔無恥(こうがんむち)
「顔から火が出る」の語源・由来
「顔から火が出る」は、恥ずかしさで顔が赤くなり、熱くなる感覚を、火が出るほどだとたとえた慣用句です。顔そのものから火が出るわけではなく、赤面と熱さを強く言い表した比喩です。
この言い方の土台には、恥ずかしさと顔の赤さ・熱さを結びつける日本語の感覚があります。「赤面」は、恥じて顔を赤らめること、また恥じることを表し、古くから恥の感情と顔の変化を結びつける言葉として使われてきました。
「顔」と「火」を直接結びつける古い言い方に、「顔火(かおび)」があります。「顔火」は、恥ずかしくて顔が熱くなることを火にたとえた言葉で、「顔火焚かる」という形でも用いられました。
古い用例として、『傾城禁短気(けいせいきんたんき)』(1711年ごろ・江戸時代中期、江島其磧作)に「傍で聞くさへ顔火(カホビ)が焼かるる事ぞかし」とあります。これは、そばで聞いているだけでも顔が火のように熱くなるほど恥ずかしい、という意味に受け取れます。
『傾城禁短気』は、浮世草子(うきよぞうし)と呼ばれる江戸時代の小説で、色道をめぐる人のふるまいや心の動きを描いた作品です。この段階では、現在の「顔から火が出る」と同じ形ではありませんが、恥ずかしさで顔が火のようになるという比喩が、すでに言葉として表れていました。
現在の形に近い「顔から火が出る」は、『真景累ケ淵(しんけいかさねがふち)』(1869年ごろ・明治時代初め、三遊亭円朝作)に見られます。そこには「冗談ぢゃアねえ、顔から火が出たぜ」という用例があり、恥ずかしくて顔が真っ赤になるという意味で使われています。
『真景累ケ淵』は、江戸時代に広く知られた累伝説を下敷きにした怪談噺で、三遊亭円朝の作として知られます。こうした口語的な語りの中で「顔から火が出る」という言い方が使われたことは、この表現が人の生きた会話に近い形で定着していったことをうかがわせます。
また、近い形として「面から火が出る」も使われました。「面(つら)」は顔を表すくだけた言い方で、1890年の落語「おふみ」には「面(ツラ)から火が出るヨ」という用例があります。
「面から火が出る」は、「顔から火が出る」と同じ意味を表し、恥ずかしくて顔が真っ赤になること、すっかり恥じ入ることを表します。顔・面という言葉の違いはあっても、恥ずかしさを火の熱さと赤さで表す発想は共通しています。
このように、「顔火」のような古い比喩から、「顔から火が出る」「面から火が出る」という言い方へと、顔の赤さと火のイメージが重なりながら広がっていきました。現在では、人前で失敗したり、間違いを知られたりして、強い恥ずかしさを感じる場面で使う表現として定着しています。
「顔から火が出る」の使い方




「顔から火が出る」の例文
- 全校集会で名前を呼び間違え、顔から火が出る思いをした。
- 仕事の会議で資料の数字の誤りを指摘され、顔から火が出るほど恥ずかしかった。
- 友人へのメッセージを別の人に送ってしまい、顔から火が出る思いになった。
- 合唱発表で一人だけ歌い出しを間違え、顔から火が出るほど赤面した。
- 来客の前で弟の名前を取り違え、母は顔から火が出るような思いをした。
- 表彰式で礼の向きを間違え、壇上で顔から火が出るほど恥ずかしくなった。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2006年。
・松村明監修『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・江島其磧『傾城禁短気』1711年。
・三遊亭円朝『真景累ケ淵』1869年ごろ。
・Oxford University Press『Oxford Advanced Learner’s Dictionary.』
・Cambridge University Press & Assessment『Cambridge Dictionary.』























