【売り家と唐様で書く三代目】の意味と使い方や例文!語源由来は?(類義語・英語)

売り家と唐様で書く三代目

【ことわざ】
売り家と唐様で書く三代目

【読み方】
うりいえとからようでかくさんだいめ

【意味】
初代が苦労して築いた財産も、三代目が遊芸にふけって家業をおろそかにすると、ついには家まで売るほど没落するという戒め。

ことわざ博士
売り家の札だけはしゃれた唐様の字で書けるというところに、財産を失っても遊芸で身につけた腕だけが残った三代目への皮肉があるよ。
助手ねこ
受け継いだ財産や家柄に頼り、本来の仕事を怠って衰えを招いた人を批判する場面に用いるニャン。

【英語】
・shirtsleeves to shirtsleeves in three generations(一代で築いた富が三代目までに失われること)

【類義語】
・長者三代(ちょうじゃさんだい)

「売り家と唐様で書く三代目」の語源・由来

ことわざを深掘り

「売り家と唐様で書く三代目」は、初代が苦労して築いた家や財産を、三代目が遊びや習い事に夢中になって失い、とうとう家まで売りに出す姿を詠んだ風刺的な五・七・五の句に由来します。

この句のおもしろさは、家を失うほど困窮しているにもかかわらず、「売り家」と書いた札の文字だけは見事にしゃれているという対照にあります。家業の腕は受け継がなかったのに、道楽で習った書道の腕は身についているという皮肉です。

唐様(からよう)とは、中国風の様式を指す言葉です。書道では、中国の書風を模した書体をいい、とくに江戸時代中期に流行した明の時代の書風を指します。

唐様の字を巧みに書く人は、「唐様書(からようがき)」とも呼ばれました。唐様の書は江戸時代中期に流行し、学問や風雅を好む人々の間で、洗練された教養の一つとして受け入れられていました。

江戸時代には、貸家の札は「かしや」と仮名で書いた紙を斜めに貼り、売家の札は漢字で書く習わしがありました。そのため、売却を知らせる札の筆跡が唐様で美しいという描写が、三代目の暮らしぶりを一目で伝える仕掛けになっています。

この句の古い来歴については、山東京山の『蜘蛛の糸巻(くものいとまき)』(1846年・江戸時代後期、山東京山著)に記されています。この書物は、山東京山が若いころから見聞きした江戸の世相や風俗を書き留めたものです。

『蜘蛛の糸巻』には、享和(きょうわ)のころの句として、「唐やうで賣店と書く三代目」とあり、よい戒めであると述べています。享和は1801年から1804年に当たるため、現在のことわざにつながる句は、江戸時代後期の初めには知られていたことになります。

ただし、『蜘蛛の糸巻』が書かれたのは、その句が詠まれたとされる享和年間より四十年ほど後です。したがって、享和当時の句集そのものではなく、山東京山が後年になって伝えた記録として受け取る必要があります。

古い記録の「唐やうで賣店と書く三代目」は、現在の「売り家と唐様で書く三代目」とは、表記や語順が異なります。しかし、唐様のしゃれた字で家の売却を知らせる三代目を描き、本業を怠って家産を失った暮らしを皮肉る点は変わりません。

財産が三代目で傾きやすいという考えは、この句だけのものではありません。『多波礼草』(1789年・江戸時代後期)に用例のある「長者三代」も、祖父が作った財産を子が守り、孫がぜいたくによって傾けることが多いという、よく似た世のならいを表しています。

こうして、もとは江戸の商家の三代目を鋭く笑った句が、受け継いだ財産や地位に安心して努力を忘れれば、家や仕事を衰えさせるという教訓を表すことわざとして定着しました。現在の形では、まず「売り家」という結末を示し、続いて、その札を唐様で書く三代目の姿を描いています。

このことわざは、書道や教養そのものを否定する言葉ではありません。本来果たすべき仕事を忘れ、先人が築いたものを失いながら、外見のしゃれや遊びの腕だけを誇る生き方を戒めています。

「売り家と唐様で書く三代目」の使い方

健太
駅前の老舗の和菓子屋さんが、とうとう閉店してビルを売りに出すことになったんだって。
ともこ
えっ、あそこは初代のおじいさんがすごく苦労して、有名なお店にしたって聞いたよ。
健太
今の三代目の社長さんが、本業の商売よりも高級な外車や美術品のコレクションにばかり夢中になっていたらしいんだ。
ともこ
まさに売り家と唐様で書く三代目の通りになってしまったんだね!

「売り家と唐様で書く三代目」の例文

例文
  • 祖父が築いた老舗を孫が道楽で傾け、まさに売り家と唐様で書く三代目となった。
  • 売り家と唐様で書く三代目にならぬよう、若い後継者は現場の仕事を一から学んだ。
  • 財産を受け継いだだけで努力を忘れれば、売り家と唐様で書く三代目になりかねない。
  • 豪華な新社屋を建てる一方で本業を怠る経営者を見て、町の人々は売り家と唐様で書く三代目と評した。
  • 代々続く旅館を遊び半分の計画で失った彼には、売り家と唐様で書く三代目という言葉が重く当てはまる。
  • 売り家と唐様で書く三代目は、受け継いだ富や信用を守る努力の大切さを教えることわざだ。

主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・時田昌瑞『岩波ことわざ辞典』岩波書店、2000年。
・Elizabeth Knowles編『The Oxford Dictionary of Phrase and Fable』Oxford University Press、2000年。
・山東京山『蜘蛛の糸巻』1846年。
・『多波礼草』1789年。




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