【餓えて死ぬは一人、飲んで死ぬは千人】の意味と使い方や例文!語源由来は?(類義語・対義語)

餓えて死ぬは一人、飲んで死ぬは千人

【ことわざ】
餓えて死ぬは一人、飲んで死ぬは千人

【読み方】
かつえてしぬはひとり、のんでしぬはせんにん

【意味】
飢えて死ぬ人は少ないが、酒の飲みすぎで命を落とす人は多いということ。酒の飲みすぎを戒める言葉。

ことわざ博士
「餓えて死ぬは一人、飲んで死ぬは千人」は、食べ物の不足よりも、自分で度を越して酒を飲むことの危うさを強く言い表しているよ。
助手ねこ
健康をそこなうほどの飲酒や、楽しみが過ぎて身を害する場面で用いるニャン。

【類義語】
・海中より盃中に溺死する者多し(かいちゅうよりはいちゅうにできしするものおおし)
・酒は百毒の長(さけはひゃくどくのちょう)

【対義語】
・酒は百薬の長(さけはひゃくやくのちょう)

「餓えて死ぬは一人、飲んで死ぬは千人」の語源・由来

ことわざを深掘り

「餓えて死ぬは一人、飲んで死ぬは千人」は、飢えによる死と、酒の飲みすぎによる死を対比して、酒におぼれる危険を戒めることわざです。「一人」と「千人」を並べることで、飢えよりも飲みすぎの害のほうがはるかに多い、という印象を強めています。

「餓える」は、食べ物がなくて腹が減ること、また、ひどく欠乏を感じて欲しがることを表します。このことわざでは、心の飢えではなく、食べ物が足りないために命にかかわる状態を指します。

「飢え死ぬ」は、空腹のために死ぬことを表す言葉です。『今昔物語集』(1120年ごろ成立、平安時代後期)には、食べ物がなく「餓死」しそうであるという例があり、食べ物の欠乏と死を結びつける表現は古くから使われていました。

一方、「飲む」は、液体をのどへ送りこむ意味のほかに、酒を体に入れる意味でも使われます。このことわざの「飲んで」は、単に水や茶を飲むことではなく、酒を飲むことを指します。

「飲酒」は、酒を飲むことを表します。古くは『万葉集』(8世紀後半成立、奈良時代)にも、仏教の五戒の一つとして「不飲酒」を述べる例があり、酒を飲むことを戒める考えも早くから言葉の中に入っていました。

また、「酒飲み」は、酒を飲むこと、酒宴、また酒が好きで多く飲む人を表します。『日本書紀』(720年・奈良時代、舎人親王ら編)には酒宴の意味での例があり、後には「酒のみ」という形で、酒を好む人を指す用法も広がりました。

このことわざは、空腹で死ぬほど困る人よりも、酒の飲みすぎで身をそこなう人のほうが多い、という形で、生活の中の油断を戒めます。飢えは外から来る苦しみとして受け取られやすいのに対し、飲みすぎは自分の楽しみや欲を止められないところから起こるため、戒めの言葉として強い働きをもちます。

酒をめぐる古い言葉には、酒をほめるものと戒めるものの両方があります。「酒は百薬の長」は、適量の酒をよいものとしてたたえる言葉で、中国の『漢書』「食貨志」に由来します。

しかし、鎌倉時代末期ごろの『徒然草』(1331年ごろ、吉田兼好著)には、「百薬の長とはいへど、万の病は酒よりこそ起れ」という言葉が出てきます。これは、酒がよいものといわれても、多くの病は酒から起こるという意味で、飲みすぎへの警戒を示しています。

「海中より盃中に溺死する者多し」も、海でおぼれて死ぬ人より、酒におぼれて死ぬ人のほうが多いという意味のことわざです。「餓えて死ぬは一人、飲んで死ぬは千人」と同じく、酒を楽しみとしてだけでなく、命や健康をそこなうものにもなりうると見る考えに立っています。

現在の「餓えて死ぬは一人、飲んで死ぬは千人」は、酒そのものを全面的に否定する言葉ではありません。度を越して飲むこと、楽しみを止められずに自分の体を害することを戒めることわざとして用いられます。

「餓えて死ぬは一人、飲んで死ぬは千人」の使い方

健太
お父さんの会社の人たち、忘年会でたくさん飲みすぎて、次の日に具合が悪くなったんだって。
ともこ
いくら楽しい会でも、体をこわすほど飲んだらだめだよね!
健太
おじいちゃんが、餓えて死ぬは一人、飲んで死ぬは千人って言っていたよ。飲みすぎへの戒めなんだね。
ともこ
うん。大人になっても、自分の体を守れる飲み方をしないといけないね。

「餓えて死ぬは一人、飲んで死ぬは千人」の例文

例文
  • 酒好きの叔父は、餓えて死ぬは一人、飲んで死ぬは千人という言葉を聞き、酒量を少し減らした。
  • 健康診断の結果を見て、父は餓えて死ぬは一人、飲んで死ぬは千人を思い出した。
  • 忘年会で無理に酒を勧めるのは、餓えて死ぬは一人、飲んで死ぬは千人という戒めに反する。
  • 餓えて死ぬは一人、飲んで死ぬは千人というように、楽しみも度を越せば体を害する。
  • 祖父は若いころの失敗を語り、餓えて死ぬは一人、飲んで死ぬは千人と家族に注意した。
  • 職場では、餓えて死ぬは一人、飲んで死ぬは千人を忘れず、酒を飲まない人にも配慮する雰囲気が大切だ。

主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修『デジタル大辞泉』小学館。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・円満字二郎編『故事成語を知る辞典』小学館、2018年。
・『今昔物語集』1120年ごろ。
・『万葉集』8世紀後半成立。
・舎人親王ら編『日本書紀』720年。
・吉田兼好『徒然草』1331年ごろ。




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