【一日敵を縦せば数世の患い】の意味と使い方や例文!故事は?(類義語・対義語・英語)

一日敵を縦せば数世の患い

【故事成語】
一日敵を縦せば数世の患い

【読み方】
いちじつてきをゆるせばすうせいのうれい

【意味】
わずか一日でも敵を見逃したり、対応を緩めたりすると、長い将来にわたって災いの原因になるということ。

ことわざ博士
「一日敵を縦せば数世の患い」は、小さな油断や一時の甘さが、後に大きな問題を生むという戒めを表しているよ。
助手ねこ
敵対する相手や深刻な問題を、早い段階で厳しく処理すべき場面で用いるニャン。

【英語】
・nip something in the bud(問題が大きくなる前に芽のうちに摘む)

【類義語】
・油断大敵(ゆだんたいてき)
・小事は大事(しょうじはだいじ)
・大事は小事より起こる(だいじはしょうじよりおこる)

【対義語】
・敵に塩を送る(てきにしおをおくる)

「一日敵を縦せば数世の患い」の故事

故事成語を深掘り

この故事成語は、『春秋左氏伝』(中国の古典で、『春秋』の解釈書と伝えられる歴史書)に出てくる「一日縦敵、数世之患也」という言葉にもとづいています。『春秋左氏伝』は、魯の歴史を書いた『春秋』を、史実や史話によって補う書物で、説話や逸話を多く含むものとして伝わっています。

もととなる場面は、『春秋左氏伝』僖公三十三年に記された秦と晋の戦いです。秦の軍は、鄭を攻めようとして進みましたが、鄭の商人・弦高が秦軍に出会い、鄭に知らせたため、鄭は守りを固めました。秦軍は、鄭を攻めることをあきらめ、滑を滅ぼして引き返します。

このとき、晋の大夫・原轸は、秦が老臣・蹇叔(けんしゅく)の忠告に従わず、欲のために兵を動かしたのを見て、秦軍を討つべきだと主張しました。原文には、「奉不可失、敵不可縦、縦敵患生」とあり、天が与えた機会を失ってはならず、敵を見逃せば災いが生じる、という考えが述べられています。

さらに、栾枝が、「秦には以前受けた恩があるのに、その軍を討つのは亡き君への不忠ではないか」とためらうと、先轸は、「秦は晋の喪を悲しまず、晋と同じ一族の国を攻めたのだから無礼である」と反論します。そのうえで、「吾聞之、一日縦敵、数世之患也」と述べ、敵を一日でも見逃せば、何代にもわたる災いとなる、と強く戒めました。

この言葉を受けて、晋はただちに兵を起こし、姜戎とともに秦軍を崤で破りました。戦いでは、秦の将である百里孟明視、西乞術、白乙丙が捕らえられます。ここでは、敵を見逃さず、将来の危険を断とうとする判断が、故事成語の中心となっています。

しかし、その後、晋では、文嬴が秦の三将を秦へ帰して処罰させたいと願い出ます。晋の君主はこれを許し、三将を放しました。先轸はこれに怒り、「軍の成果を失い、仇を育てることになる」と非難します。つまり、もとの故事の中でも、「敵を縦す」ことが将来の危険につながるという考えが、続けて描かれています。

「縦」は、現代では「たて」と読むことが多い漢字ですが、古い意味では「ゆるす」「見のがす」という意味もあります。この故事成語の「敵を縦せば」は、敵を思いのままにさせる、または見逃してしまうという意味です。

現在の日本語では、実際の戦争や敵だけでなく、放っておくと大きな災いになる問題にもたとえて使われます。小さな不正、危険な習慣、初期の失敗、広がり始めたうわさなどを早く正すべきだという意味で用いると、故事の考え方に自然につながります。

「一日敵を縦せば数世の患い」の使い方

健太
校庭の花だんに、小さな外来植物が一本だけ生えていたよ。今日は忙しいから、抜かなくてもいいかな?
ともこ
一日敵を縦せば数世の患いだよ!種が広がったら、来年は花だん全体から抜くことになるかもしれないよ。
健太
たしかに、一株のうちに取ればすぐ終わるね。先生に聞いて、抜いてよい植物か確かめるよ。
ともこ
うん。小さい問題のうちに向き合えば、大きな困りごとを防げるね。

「一日敵を縦せば数世の患い」の例文

例文
  • 一日敵を縦せば数世の患いというから、小さな不正でも見逃さずに正す必要がある。
  • 害虫を数匹だけだと思って放置した結果、一日敵を縦せば数世の患いとなった。
  • うわさを早く止めなければ、一日敵を縦せば数世の患いのように、後々まで人間関係を傷つける。
  • 会社は情報漏えいの兆しを軽く見ず、一日敵を縦せば数世の患いと考えて対策を急いだ。
  • 一日敵を縦せば数世の患いという戒めは、危険な問題を初期のうちに処理する大切さを教える。
  • 地域の小さな安全上の欠陥を放置すれば、一日敵を縦せば数世の患いになりかねない。

主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・白川静『字通 普及版』平凡社、2014年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・『春秋左氏伝』。
・Oxford University Press『Oxford Advanced Learner’s Dictionary』。




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