【君子の交わりは淡きこと水の如し】の意味と使い方や例文!故事は?(類義語・対義語)

君子の交わりは淡きこと水の如し

【故事成語】
君子の交わりは淡きこと水の若し

【読み方】
くんしのまじわりはあわきことみずのごとし

【意味】
徳のある立派な人どうしの交際は、水のように淡泊であるが、その友情はいつまでも変わらないということ。

ことわざ博士
君子の交わりは淡きこと水の若しは、必要以上に相手へまとわりつかず、利害に左右されない信頼関係を表すんだよ。
助手ねこ
頻繁に会ったり親しげな言葉を重ねたりしなくても、互いを信頼して長く付き合う場面に用いるニャン。

【類義語】
・淡交(たんこう)

【対義語】
・小人の交わりは甘きこと醴の若し(しょうじんのまじわりはあまきことれいのごとし)

「君子の交わりは淡きこと水の若し」の故事

故事成語を深掘り

「君子の交わりは淡きこと水の若し」は、中国の古典『荘子(そうじ)』の外篇「山木(さんぼく)」に由来します。原文には、「君子之交淡若水、小人之交甘若醴」とあり、立派な人どうしの交わりを水に、目先の利益で結ばれた人どうしの交わりを甘い醴(れい)にたとえています。

この言葉は、孔子と子桑雽との問答の中に出てきます。孔子は、魯(ろ)から追われ、宋(そう)で危害を受け、陳(ちん)と蔡(さい)の間で苦境に陥るなど、たび重なる災難を経験したため、親しくしていた人々が次第に離れ、従っていた者たちも散ってしまったと嘆きました。そして、なぜこのようなことになるのかと、子桑雽に尋ねます。

子桑雽は、それに答えて、林回という人物の話を語りました。林回は、国が乱れて逃げるとき、千金もの価値がある玉を捨て、幼い子どもを背負って走りました。人から理由を尋ねられると、玉とは利益によって結び付いているが、子どもとは生まれながらのつながりで結ばれている、と答えました。

利益によって結ばれた関係は、苦難や災いが迫れば、互いを見捨てます。しかし、深い信頼や本来のつながりによって結ばれた関係は、苦しいときほど互いを支えます。子桑雽は、この二つの違いを示したうえで、「君子の交わりは淡きこと水の若し」と説きました。

原文はさらに、「君子淡以親、小人甘以絶」と続きます。君子の交際は、表面上は淡泊でも、かえって親しみが深まり、小人の交際は、初めこそ甘く親密に見えても、やがて途絶えるという意味です。また、特別な理由もなく結び付いた者は、特別な理由もなく離れていくとも述べています。

ここでいう「淡い」は、相手に冷たくしたり、友情が浅かったりすることではありません。相手の利益を当てにせず、気に入られようとして必要以上に機嫌を取ることもなく、互いの人格を尊重して付き合う態度を指します。水には甘い味はありませんが、日々飲んでも飽きにくいことから、静かに長く続く交際のたとえとなっています。

一方、「醴」は、甘酒に近い甘い飲み物です。小人の交わりは、初めは醴のように甘く、親しげに見えますが、利益がなくなったり、思いどおりにならなくなったりすれば、急に崩れてしまいます。水と醴との対照によって、見た目の親密さよりも、利害に動かされない信頼のほうが長く続くことを表しています。

『礼記(らいき)』の「表記」にも、「故君子之接如水、小人之接如醴。君子淡以成、小人甘以壊」とあります。こちらでは、「交」ではなく「接」、「若水」ではなく「如水」と表しますが、君子の付き合いは水のように淡く、小人の付き合いは醴のように甘いという対照は共通しています。

そのため、日本語では、「水の若し」のほか、「水の如し」や、ひらがなで「水のごとし」とも書きます。「若」と「如」は、どちらもここでは「〜のようである」という意味を表すため、表記が違っても故事成語の意味は変わりません。

日本では、短くまとめた「淡交(たんこう)」という言葉が、『万葉集(まんようしゅう)』(8世紀後半成立)の巻十七、三九六七番の題詞に出てきます。これは、水のようにあっさりとした君子の交際を表す言葉で、『荘子』の考え方が古くから日本の文章に取り入れられていたことを示します。

現在の形に近い古い用例は、『好色破邪顕正(こうしょくはじゃけんせい)』(1687年・江戸時代前期)にあります。「君子のまじはりは、淡ふして水のごとし」とあり、知り合ったときから、過度に甘くも辛くもない交際を表すために用いています。

近代には、森鷗外の『灰燼(かいじん)』(明治44年から大正元年)で、「君子の交は淡きこと水の若し」として使われています。この用例では、あまりしつこく付き合わないほうがよいという助言に用いられており、互いの距離を尊重する交際という、現在の使い方へつながっています。

この故事成語は、親しい友人なら常に一緒にいなければならない、という考えを表すものではありません。会う回数や言葉の多さに頼らず、相手の立場を尊重し、困ったときには支え合える関係こそ、静かで長続きする友情であると教えています。

「君子の交わりは淡きこと水の若し」の使い方

ともこ
転校した美咲ちゃんとは、毎日連絡しているの?
健太
ううん。たまに手紙を送るくらいだけど、久しぶりに会ってもすぐ前のように話せるよ。
ともこ
いつも一緒でなくても、ずっと信頼し合っているんだね。
健太
君子の交わりは淡きこと水の若しだね!無理につながっていなくても、大切な友達だよ。

「君子の交わりは淡きこと水の若し」の例文

例文
  • 二人は頻繁に会わなくても信頼を失わず、君子の交わりは淡きこと水の若しを思わせる友情を保っている。
  • 君子の交わりは淡きこと水の若しというように、親しい友人にも必要以上に干渉しないことが大切だ。
  • 卒業後は別々の道へ進んだが、君子の交わりは淡きこと水の若しで、二人の友情は少しも変わらなかった。
  • 父は古い友人と年に一度しか会わないが、君子の交わりは淡きこと水の若しという関係が四十年も続いている。
  • 取引上の利益がなくなっても互いを助け合う両社の関係は、君子の交わりは淡きこと水の若しという言葉にふさわしい。
  • 君子の交わりは淡きこと水の若しを心に留め、相手の生活へ踏み込みすぎず、困ったときには力を貸した。

主な参考文献

・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・円満字二郎編『故事成語を知る辞典』小学館、2018年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・池田知久訳注『荘子 下 全訳注』講談社、2014年。
・『礼記』。
・『万葉集』8世紀後半成立。
・北条団水『好色破邪顕正』1687年。
・森鷗外『灰燼』1911〜1912年。




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