【慣用句】
車の両輪
【読み方】
くるまのりょうりん
【意味】
二つのうち、どちらが欠けても成り立たないほど、互いに密接な関係にあることのたとえ。


【英語】
・go hand in hand.(密接に結び付き、共に進む)
【類義語】
・鳥の両翼(とりのりょうよく)
【対義語】
・水と油(みずとあぶら)
「車の両輪」の語源・由来
「車の両輪」の「両輪」は、車の左右にある二つの車輪を指します。車輪の一方が失われたり、正しく働かなかったりすれば、車は本来の役目を果たせません。この具体的な仕組みから、二つのうち、どちらも欠かすことのできない関係を表すようになりました。
古い用例として、『応永二十七年本論語抄(おうえいにじゅうしちねんぼんろんごしょう)』(1420年・室町時代、清原良賢講)の「学而第一」に、「礼楽の二は車の両輪の如く、鳥の両翼の如し」とあります。日本語の文献における「車の両輪」の早い例として挙げられるものです。
『論語抄』のような「抄物(しょうもの)」は、室町時代を中心に、漢籍や仏典などを講義した内容や、その注釈を書き留めたものです。この一節も、『論語』の本文そのものではなく、『論語』を読み解く講義の中で用いられたたとえです。
ここで両輪にたとえられた「礼楽(れいがく)」とは、礼儀・制度を表す「礼」と、音楽を表す「楽」のことです。古代中国の儒家は、「礼」が社会の秩序を整え、「楽」が人の心を感化して調和を生むものと考え、どちらも文化や政治に欠かせないものとして重んじました。
つまり、この用例では、礼だけでも楽だけでも望ましい社会は成り立たないという考えを、左右の車輪がそろわなければ車が進めないことに重ねています。さらに、「鳥の両翼」も並べることで、二つが支え合って初めて一つの働きを成し遂げるという意味を、いっそう分かりやすく表しています。
後の狂言『花子(はなご)』の詞章にも、「車の両輪(りょうわ)のごとく」という言い回しが出てきます。ここでも、互いに離れにくく、二つで一組となる関係を示すたとえとして用いられています。
「両輪」には、現在一般的な「りょうりん」のほかに、古い読み方として「りょうわ」もあります。狂言の詞章では「りょうわ」と読まれますが、現代の慣用句「車の両輪」は、ふつう「くるまのりょうりん」と読みます。
このように、「車の両輪」は、もとは左右の車輪という具体的な組み合わせを表し、室町時代にはすでに、礼と楽のような二つの重要な働きを示す比喩として使われていました。その後、人と人、理論と実践、権利と責任など、別々でありながら共に必要となる二つの要素を広く表す慣用句として定着しました。
「車の両輪」の使い方




「車の両輪」の例文
- 知識を学ぶことと実際に試すことは、上達を支える車の両輪だ。
- 信頼と率直な話し合いは、長く友情を育てる車の両輪となる。
- 入念な計画と当日の連携は、行事を成功させる車の両輪である。
- 製品の品質と利用者の安全は、会社が守るべき車の両輪だ。
- 子どもの自立を促すことと必要なときに支えることは、子育ての車の両輪といえる。
- 災害への備えと被災後の支援を車の両輪として、地域全体で取り組む必要がある。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2006年。
・中田祝夫編『応永二十七年本論語抄―東山文庫蔵称光天皇宸翰』勉誠社、1976年。
・小山弘志校注『日本古典文学大系42 狂言集 上』岩波書店、1960年。
・Cambridge University Press & Assessment, 『Cambridge Dictionary.』




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