【鉦や太鼓で捜す】の意味と使い方や例文!語源由来は?(類義語・英語)

鉦や太鼓で捜す

【慣用句】
鉦や太鼓で捜す

【読み方】
かねやたいこでさがす

【意味】
大勢で大騒ぎをしながら、あちこち捜し回ること。

ことわざ博士
鉦や太鼓を打ち鳴らすほど、大掛かりに捜す様子を表すんだよ。
助手ねこ
人や物がなかなか見つからず、多くの人手をかけて捜し求める場面で用いるニャン。

【英語】
・leave no stone unturned.(できる限りの手を尽くして捜す)

【類義語】
・草の根を分けて捜す(くさのねをわけてさがす)

「鉦や太鼓で捜す」の語源・由来

慣用句を深掘り

「鉦や太鼓で捜す」は、迷子が出たとき、人々が鉦や太鼓を打ち鳴らしながら、大勢で捜し歩いた習慣にもとづく表現です。音を響かせ、大声で名を呼びながら町や村を巡るという、たいへん目立つ捜索の様子から生まれました。

「鉦(かね)」は、銅やその合金で作られる金属製の打楽器です。平たい円盤や皿のような形をしており、撞木(しゅもく)や桴(ばち)で打って鳴らします。日本では、祭礼囃子(さいれいばやし)や念仏踊りなどにも使われ、一般には「かね」と呼ばれます。

昔、子どもが突然いなくなると、単に道に迷っただけでなく、天狗や狐などに連れ去られた「神隠し」だと考える地域もありました。そのようなときには、村中の人々が集まり、鉦や太鼓をたたいて子どもの名を呼び、「返せ」「戻せ」と叫びながら近辺を捜し回りました。

鉦や太鼓の大きな音には、遠くまで捜索を知らせ、人を集める働きがありました。同時に、子どもを隠したと信じられていた神霊などに、その子を返すよう求める意味も込められていました。

このような捜索は、町内や村の人々が総出で行う大騒ぎでした。そこから、実際に楽器を鳴らす場合に限らず、多くの人が大掛かりに捜し回ることを「鉦や太鼓で捜す」と表すようになりました。

現在の表現につながる古い形として、雑俳集『川傍柳(かわぞいやなぎ)』(1780〜1783年・江戸時代後期、牛込蓬連、柄井川柳選評)には、「祭礼のあした笑止な鉦太鞁」とあります。ここでいう「鉦太鼓」は、迷子を捜して鳴らす鉦と太鼓、またはその捜索そのものを指す言い方です。

「鉦太鼓で探す」というまとまった形は、式亭三馬の滑稽本『浮世風呂(うきよぶろ)』(1809〜1813年・江戸時代後期、式亭三馬著)に出てきます。この作品は、銭湯に集まる江戸の人々の会話を生き生きと描いたものです。

『浮世風呂』の前編には、「豆の数は鉦太鼓で探す程だアおめへ」とあります。入れた豆の数がたいへん少なく、鉦や太鼓を鳴らして捜さなければ見つからないほどだと、面白おかしく誇張した言い方です。

この用例では、迷子を捜す実際の習慣から離れ、「見つけるのが難しいほど少ない」という比喩に変わっています。江戸時代後期にはすでに、鉦や太鼓を鳴らして捜す様子が、日常会話の誇張表現として通じていたことが分かります。

為永春水の人情本『吾嬬春雨(あずまのはるさめ)』(1832年・江戸時代後期、為永春水著)には、「昨夜迷子が来て」とあります。この「迷子」は、行方不明の子どもではなく、鉦や太鼓を鳴らして行う迷子捜しを指しており、その習慣が一つの出来事として広く知られていたことを示しています。

表現には、「鉦太鼓で捜す」「鉦太鼓で歩く」「鉦や太鼓で探す」などの形があります。「鉦や太鼓で捜す」は、二つの鳴り物を「や」で並べた形で、にぎやかに捜し回る光景を分かりやすく伝えています。

現在では、大勢で騒がしく捜す意味のほか、「鉦や太鼓で捜しても見つからない」のように、望ましい人や珍しい物が非常に得にくいことを強調する場合にも使います。もとの迷子捜しの大騒ぎが、手を尽くして捜し求めることを表す慣用句へと広がったものです。

「鉦や太鼓で捜す」の使い方

健太
放課後、学級文庫の貸出カードがなくなって、みんなで教室や廊下を捜したけれど、まだ見つからないんだ。
ともこ
先生もほかのクラスに声をかけたんでしょう?ずいぶん大掛かりな捜し物になったね。
健太
うん。まるで鉦や太鼓で捜すような大騒ぎなのに、どこにもないんだ……。
ともこ
机の隙間や本棚の裏を、場所ごとに分けてもう一度確かめよう!

「鉦や太鼓で捜す」の例文

例文
  • 行方不明になった犬を見つけるため、町内総出で鉦や太鼓で捜す騒ぎとなった。
  • 重要な契約書が消え、社員全員で鉦や太鼓で捜すように社内を調べ回った。
  • あれほど腕のよい職人は、鉦や太鼓で捜すほど手を尽くしても簡単には見つからない。
  • なくした指輪を鉦や太鼓で捜す勢いで家中捜したが、上着のポケットに入っていた。
  • 迷子の知らせを受けた係員たちは、鉦や太鼓で捜すような大掛かりな捜索を始めた。
  • この土地の古い言い伝えを詳しく知る人は、今では鉦や太鼓で捜すほど少なくなった。

主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・平凡社編『改訂新版 世界大百科事典』平凡社、2007年。
・牛込蓬連、柄井川柳選評『川傍柳』1780〜1783年。
・式亭三馬『浮世風呂』1809〜1813年。
・為永春水『吾嬬春雨』1832年。




講談社刊行・全3冊

運営者・北澤篤史の著書

ことわざ・四字熟語・漢字熟語を、マンガで楽しく学べる図鑑シリーズです。

※Amazon・楽天の購入先にはアフィリエイトリンクが含まれます。

マンガでわかる すごい!ことわざ図鑑〈試験に出る〉の表紙
ことわざ

マンガでわかる すごい!ことわざ図鑑〈試験に出る〉

試験によく出ることわざを、マンガと解説で楽しく学べる一冊。

マンガでわかる おもしろ四字熟語図鑑〈試験に出る〉の表紙
四字熟語

マンガでわかる おもしろ四字熟語図鑑〈試験に出る〉

四字熟語をマンガで理解し、意味・漢字・使い方を覚えたい人へ。

マンガでわかる 漢字熟語の使い分け図鑑の表紙
漢字熟語

マンガでわかる 漢字熟語の使い分け図鑑

似た意味・同じ読みの漢字熟語の違いを、マンガと用例で学べる一冊。